
型紙・CADデータの無償提供要請|下請法(取適法)で確認する対価と利用範囲
型紙やCADデータの提供要請を受けたら、納品対象、権利、利用目的、利用者、期間、対価を分けて確認し、合意を文面で残します。下請法(現在の取適法)との関係も、無償という言葉だけで決めず、当初の依頼と契約、追加作業、受託側の負担を含む事実から確認します。

型紙データの提供と権利移転は別に考える
型紙・CAD・グレーディング・仕様データの違い
型紙は各パーツの形状や縫い合わせに用いる設計成果、CADデータはその編集可能な電子ファイル、グレーディングは基準サイズから各サイズへ展開した成果、仕様データは寸法、縫製、付属、表示などの情報です。これらを「データ一式」とまとめると、何を納品し、何を社内作業用として保持するかが曖昧になります。アパレル縫製仕様書と役割を分け、成果物ごとに作成者、形式、納品済みかを棚卸しします。
同じ品番でも、初回サンプル、修正サンプル、量産承認で版が変わります。ファイル名だけに「最新」と付けず、版番号、更新日、更新者、承認状態を持たせてください。紙型とCADの内容が一致しているか、外注パタンナーから受けた形式を自社で変換したかも記録すると、提供対象を取り違えません。
| 資産 | 内容の例 | 提供前に確認すること |
|---|---|---|
| 型紙 | 各パーツの形状、縫代、記号 | 原紙か出力物か、対象品番 |
| CADデータ | 編集可能な型紙ファイル | 形式、互換性、追加変換作業 |
| グレーディング | サイズ展開したパターン | 対象サイズ、修正履歴 |
| 仕様データ | 寸法、縫製、付属、表示 | 版、承認日、第三者情報 |
納品物・所有・利用許諾・再利用を分ける
ファイルを納品することと、成果に関する権利が移ること、特定目的で利用を許すこと、別工場や別品番で再利用を認めることは同じではありません。契約や依頼内容によって結論が変わるため、各項目を別々に確認します。アパレルOEM契約書の成果物条項と、アパレルの意匠・商標・模倣対策の権利整理を突き合わせ、第三者素材やソフトウェアの条件も確認してください。
「所有」という言葉が、紙型の現物所有、データの保管、知的財産権の帰属のどれを意味するかも具体化します。社内作業用の治具情報や他社案件のノウハウが同じファイルへ含まれる場合は、提供範囲を分離できるか検討してください。提供可否と権利帰属を一つの選択欄で管理しないことが大切です。

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無償提供を求められたときの確認手順
当初の依頼と契約範囲を確認する
最初に、見積、契約、発注書、提案資料から、制作を依頼された成果物と納品形式を特定します。紙の型紙納品だけか、編集可能なCAD形式も含むか、グレーディングや仕様更新をどこまで含むかを確認してください。制作費の項目名だけで権利移転まで推測せず、説明資料と協議履歴を読み合わせます。取適法の対象になり得る取引かは取適法の基本と製造委託と売買の違いで確認します。
当初契約に記載がない要請なら、いつ、誰から、どの理由で追加されたかを記録します。見積に含む作業、別途見積が必要な作業、技術的に提供できない項目を分けて回答してください。以前の品番で提供した実績があっても、今回の契約条件と同じとは限らないため、慣例だけで範囲を決めません。
利用目的・利用者・期間・改変を確認する
要請側には、どの品番に、誰が、どの期間、どの地域で使用するのかを確認します。別工場への移管、後継品への流用、サイズ追加、改変、第三者への再提供が想定されるなら、それぞれ可否を分けてください。「生産に使う」「自由に使う」といった広い表現では、合意範囲を後から説明できません。委託先工場名を特定できない場合も、利用者の範囲と再提供時の承認手順を決めます。
試作だけに使うのか、量産にも使うのか、補修や追加生産に残すのかも確認します。海外拠点へ渡す場合は、利用する法人、工場、受渡経路、再複製の管理を具体化してください。目的が変わったときに再承認を求める条件と連絡先を定めると、最初の合意が無期限に拡張されるのを防げます。

対価、形式、返却・削除を合意して残す
提供にファイル変換、データ整理、注記追加、再検証などの作業が必要なら、その範囲と対価を見積もります。納品形式、受渡方法、納品日、検収、利用許諾の範囲、終了後の返却・削除、バックアップの扱いを文面にしてください。取適法本文5条2項2号の経済上の利益の提供要請との関係は、受託側の負担や必要性を含む実態から確認します。無償の要請だけで個別の違反を断定しません。
受渡しでは、ファイル一覧、版、容量、形式、暗号化、受領者、送付日を記録します。相手が受領後に開けない場合の再送や形式変換をどこまで含めるかも決めてください。返却・削除を求める場合は、対象となる複製、期限、完了確認の方法を合意し、自社側の保存義務や紛争対応に必要な記録と区別します。
型紙・データの取扱い確認表
成果物ごとの権利・利用・対価を一覧にする
確認表は品番単位で作り、型紙、CAD、グレーディング、仕様データを行に分けます。作成者、納品形式、権利、利用目的、利用者、地域・期間、改変・再提供、対価、終了時の処置を記録してください。曖昧な項目は空欄ではなく「協議中」とし、回答者と期限を置きます。繊維取引の補足は繊維産業の適正取引ガイドラインも参照します。
台帳には根拠となる契約条項、見積、承認メールへの参照先を入れます。条件変更があった場合は行を上書きせず、旧条件の終了日と新条件の開始日を残してください。複数工場へ提供したときは提供先ごとに履歴を分け、どの版を誰が保有しているかを定期的に確認します。

| 成果物 | 作成者 | 納品形式 | 権利の確認 | 利用目的・利用者 | 地域・期間 | 改変・再提供 | 対価 | 返却・削除 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 型紙・CAD等を個別記載 | 社内・外注を特定 | 紙・編集可能形式等 | 契約条項を参照 | 品番・工場まで具体化 | 適用範囲を明記 | 可否と承認方法 | 作業内訳と合意 | 終了条件と証拠 |
判断時は、公正取引委員会・中小企業庁・特許庁の「知的財産権・ノウハウ・データの適切な取引のための優越的地位の濫用等に関する指針」(令和8年6月24日公表)も確認し、自社の契約と具体的な要請事実へ当てはめます。
型紙データの提供に関するよくある質問
制作費を受け取っていれば権利も移りますか
制作費の支払いだけで、すべての権利や用途が当然に移るとは限りません。契約、依頼内容、納品物、利用許諾の記載を分けて確認します。見積書に「型紙作成費」とある場合も、紙の型紙を納品するのか、編集可能データを渡すのか、別工場で再利用できるのかは別の問いです。権利帰属を断定できないときは、対象成果物と利用予定を具体化して専門家へ確認してください。
支払済みという事実と、何への対価だったかを分けて記録します。口頭説明と契約文言が一致しない場合は、双方の認識を文面で確認し、将来の利用範囲を新たに合意します。
編集可能なCAD形式で渡す義務がありますか
一律の義務とは断定できません。当初の納品条件、利用目的、編集可能データを作る追加作業、互換性、第三者権利を確認し、形式と対価を合意します。閲覧用PDFや出力紙の提供と、元の編集データの提供は作業やリスクが異なります。提供する場合も、版番号、使用ソフト、変換によるずれ、検収方法を記載し、どの時点の承認済みデータかを明確にします。
変換後のデータが元データと完全に同じ動作をするとは限らないため、確認環境と許容する差異を決めます。相手の指定形式に変換するための再作業がある場合は、工数と納期を提示してください。
別工場での再利用を認めるかはどう決めますか
対象品番、利用する工場、期間、改変可否、再提供可否、対価、終了後の取扱いを具体化します。生産移管のために必要な利用と、別商品への転用は分けてください。第三者へ渡す場合の秘密保持、事故時の連絡、再複製の管理も協議します。曖昧な「自由に使える」ではなく、許される用途と禁止する用途を文面にし、変更があれば改訂日と承認者を残します。
工場変更後に旧工場が保有する複製をどう扱うかも決めます。移管先がさらに外注する可能性があるなら、再提供の承認手順と責任者を明記し、利用先一覧を更新できるようにしてください。
再利用を認めた後も、利用品番の追加や工場の再変更は当初範囲に含まれるとは限りません。変更申請の窓口と回答期限を決め、承認前に利用を広げない手順を共有します。

型紙やCADデータの要請では、成果物の納品と、権利移転、利用許諾、再利用を分けることが重要です。当初契約、利用目的、利用者、期間、改変、対価、終了時の処置を成果物ごとに確認し、合意と変更履歴を残してください。
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